1回草津温泉 「温泉観光士」 養成講座レポート

(1)     温泉行政

過去,特に戦後の歴代町長は世間一般に言うところの観光地,例えば熱海,また一方,高原のイメージでは軽井沢を目指し追いつけ追い越せ式の拡大路線を歩んで来た(別紙参照)。悪いことに西洋カブレがこれを更に助長してしまった。

その結果,源泉を壊し、景観を損ねるという,大きな間違いを犯して来た訳で,今となっては,取り返しはつかないが,今後は少しでも早く、草津温泉の一番大事な源泉の保護に重心を移さなくてはいけない時代である。

幸いな事に世の中の流れがうわべの拡大より,本物を求めはじめてきたので、遅ればせながら,行政も軌道修正をしてきた事を今となっては、それを、せめてもの救いであると納得するより他はない。

ある高僧が人を作るには「都会に住むな、権力に近づくな。」というが、我々世代も含め、定年後の自分の第二の人生の一時、都会を離れ、田舎へ旅をしにくるその方たちの思いに対しても、草津温泉の源泉を守り田舎を守り人を作る事が草津町行政の仕事であり、われわれ草津っ子は子々孫々まで考えた行動でなくてはいけない。

目先の発展が良いように錯覚していては国民のための真の温泉行政にはならない。

最近ブームの黒川温泉等も上滑りの感、多々あり。

 

(2)     温泉地学

別紙でも少し触れたように,草津温泉は白根山,殺生河原あたりの雨、雪が地中に染み込み数ヵ月後に湯畑等に自然湧出する火山性自然湧出温泉と先代達から聞いているが,この自然環境の中での自然循環式の温泉である草津温泉は枯渇の心配はないはずであった、が、しかし,湧出量の減少が起き,また源泉によっては枯渇が起きる可能性は非常に高い。現に賽の河原、湯畑、地蔵の湯畑等軒並み湯量の減少、温度低下が著しい。

これは,人為的な高層建築,乱開発によるもの、また万代鉱の悪影響が顕著に現れているものと考える。

この万代鉱は鉱山会社が草津に残した一大汚点となった。

草津温泉町は、この自然湧出の環境を保護することが一大命題である。

他の温泉地の多くはボーリングによる温泉であるので,数年のうちに減少,枯渇となることは必至である。

ボーリング温泉は良くないと、私が30余年前から提唱している所以である。(別紙参照)

 

(3)     温泉科学

最近の温泉表示の方法は解りづらくて,個人的には好きではない。

草津温泉の以前の表示「含硫化水素強酸泉明礬緑礬硫黄泉」の方が好きである。

このほうが、成分が分かり良いのは私だけではないと思う。

技術的なこと、専門的な事はその道の専門家にお任せするのではあるが、なるべく日本人向きな、日本的な表示方法を考案してもらいたいものではあるのだが。

 

(4)     温泉医学

温泉療養は先人の智恵にそって行うのが、間違いがない方法である。

その代表格が草津では「時間湯」というシステムである。(別紙参照)

科学的に云々と西洋医学的には言わなくては通りが悪いのであるが、近年、西洋医学はデカルト的発想の医療と言われ、その行き詰まりから医者の中にも伝統医療、代替医療を研究する人が増えているのはうれしいことである。

なにはともあれ、温泉の上手な使い方をし、健康に寄与することは温泉地の人間としては最高の喜びである。

中国では「西医は中医に如かず.中医は気功に如かず。」と言うが、まことに同感である。

 

(5)     温泉生物学

草津温泉についていえば、青い藻(コケ)が温泉の中に発生していて、これは硫化水素を餌にして生きていると聞いている。海底火山の火口の周りにも同様なコケが生息しているといい、地球上の生物の最初のものではと聞いたことがある。(上記の真意のほどは定かではないが。)→ 追;*後日、長島博士に聞きましたところイデユコゴメという貴重な藻だそうです。光合成をしているとのこと。*

奥草津に群生している、ちゃつぼみゴケは低温の酸性泉に自生していて、これは高温にすると死滅してしまう。昔は賽の河原の向かって右側の川で見られたが、心無い行政の乱開発により今は見られない。〔草津っ子は“まりごけ”と呼んでいた。〕

在郷軍人病の原因のレジオネラ属菌は、地中、沼、等、自然界には当然のことながら存在している菌であるので、菌自体がどうこうという前に、ボーリング温泉は許可しないとか、厳しく条件をつける等、処置をすべきである。

消毒する等のことのみに目を奪われて行政を行うと言う事は一般に感じている温泉とは別次元のものとなってしまう。

(在郷軍人病は別紙参照)

 

(6)     温泉工学

温泉採掘については、上記記載のように反対である。集中管理をして消毒するようなことも反対であるし、そのような温泉地を人為的に作る事は反対である。

自己を運びて、万法を修証する、と言う言葉があるが、まさにこれにあたる。この言葉は次に、これを迷とす。万法を進みて自己を修証すは悟なり。と続くのである。

 

(7)     温泉文化

文化の保存、温泉地域資産(源泉の保存)は当然の事であるが、町外者の方々から強力に発言いただく事が非常にありがたいことであるので、今後ともお願いしたい。

 

 

(8)     温泉観光学

温泉地の現状は今まさに曲がり角にある。

戦後のイケイケドンドン式の俗に言う観光旅館が低迷すると言う状況になってきたという事は、経営者は時代が変わり大変ではあるが、国民の旅行形態が進歩したと言える。

私の宿は、群馬県で外人客が一番多いと言われ、世界各国の方の話しを聞くと、日本の高級旅館も彼らの多くはクレイージーと感じている。

これらの旅も高級旅館とか、女将が云々とメディアによって作られた産物であるので

もう一歩国民が進歩すると様子が一変すると確信する。

旅行作家の人たちの責任も多々あると常々感じているが、責任をもった取材記事のお願いをしたいし,またそう希望する。

余談ではあるが、この春,国土交通省へ寄ったとき、おたくの町のカリスマ町長が先日来ましたよ、と得意げに言うので、すかさず私がその彼に、本人が自分はカリスマ町長だと思い込んだらどうするのだ! と一発雷を落としておいた。

これなども今の役人の軽さがうかがえる一件である。

カリスマ女将程度のものなら笑ってすむが、カリスマ町長等々の言葉はこの部署での発案のようであったが、こんな言葉遊びを役人が喜んで作っているのでは、行政が横道にそれる。平和すぎる時代のあだ花であろうか。

この話を親しい国会議員の第一秘書に話したところ、今の役人はこの手の人が非常に多くて・・・・・。と言っていた。

役人が旅行作家のような言葉遊びにうつつを抜かして、それを受けたほうもその気になってしまう怖さを感じる。

旅行作家等含めそのような発想を持つ人たちの影響の一端が白骨温泉の問題、草津温泉の偽物の湯の花問題等に関係して来るわけでもある。 

受け狙いは所詮一過性のもので本物には成りえないのだから。

                     

平成1610月吉日

   

草津温泉「温泉観光士」協会会長 

IFAM(International Federation of Alternative Medicine)
    チェルノブイリ医療奉仕団メンバー、中国氣功医師、

モスクワ政府健康問題センター会員

草津温泉尻焼き風呂の桐島屋旅館館主 統合医学Ph.D. 中澤 芳章